2009/09/08

熱帯の夢


☚2009年8月23日 第一刷発行 茂木健一郎さん著。
先日、サインを頂いた本です。

>旅をすることの意義は、どれくらい真摯に突き動かされるかという点にある。問題は、旅をしていることの長さにあるのではない。どれほど没入し、そして動かされるか。故郷からはなれてしまうことができるか。自分の中に、その時の元素のようなものを取り入れることができるか。どんな「精霊たち」に出会うことができるか。
(中略)
 いつかは行ける、というのではダメである。旅は、焦燥にかられて赴くのでなければならない。旅をすることが私たちの中に残す痕跡。それが大きく成長するのには時間がかかるということを理解しなければならない。ダーウィンがその「畢生の大作」・(Magnum Opus)である『種の起源』を世に問うたのは、50歳の時であった。ビーグル号の旅でガラパゴス諸島を訪れ、奇妙な生き物たちを観察し、進化論のアイデアを得てから、すでに四半世紀の時間が過ぎていた。
 着想の「種」にとって、機が熟すのには、それだけの時間がかかる。できるだけ早く出かけて、魂のうちに種を植え付けなければならない。私も、すでに人生の半ばを過ぎた。何ものかの萌芽を抱くには、遅すぎるかもしれない。それでも、旅する衝動は消えない。おそらく、生涯の最後の瞬間に至るまで。もうすぐ人生を終えるような人までが心の中に種を植え付けて一体何になるのだという考えもあるだろう。それでも、心臓の鼓動が消えるその最後の瞬間まで、私たちは前に進み続ける。人間は、突き動かされてそうせざるを得ない生き物なのだ。



前半の写しには、かなり重要なことばかりが並んでいるように感じます。
自分の知らない、馴染みのない世界を訊ねることは大きなストレスも伴うと思います。
出会った世界が鮮烈で、自分の世界をすべて押し流してしまうほどのものは、もしかしたら今までの自分にとっては脅威なのかもしれず、受け入れ難い気持ちに覆われてしまうかもしれません。

でも、茂木さんを知り得る限り観察していると、茂木さんはそれにとても強い。と感じます。

そんな脅威となりうる世界を自らの好奇心にそそのかされるままに、占領させることは、自分を強くして、大きくして、広くするチャンスなのだと感じます。

その大らかさを持ち続ける人間でありたいと思いました。

本全体は、もっとやんちゃな部分も多くあり、一気に読めます。
わたしにとっては、しづかにキラキラした鉱石のような本です。

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