2009/07/21

桂枝雀のらくご案内~枝雀と61人の仲間


☚1996年 第一刷発行。

1939年神戸に生まれる。1999年4月没。

とても話し言葉がやさしくて、タンタンとリズムよく進む。
勉強不足故、1度読んだだけではオチが分からない噺(はなし)もあるが、読み進むにつれ、味わい深い面白味を感じられるようになる。

>まくら

 いつの頃からか持ちネタを六十にしぼったのでございます。「六十」という数字には、宗教的な意味も、ましてや哲学的な意味もございません。自分の好きなネタを集めてみますとたまたま六十になっただけなのでございます。
 どの噺も何百とある大阪落語のなかから選んだ私の仲間なのです。この六十人の仲間たちは、私を中心に円陣をつくっています。で、ひとりひとりがその円の外側に向かってボチボチと歩きだしているのです。それを私が「コレコレ、どこへ行くねんな」とよび戻します。よび戻す方法はただひとつ、お稽古のみであります。充分お稽古が足って、高座でもよく演らせてもらっている仲間は、私のひざのまわりでウロウロしていますが、めったに手がけない噺は正直なもんで、はるかかなたの隣町の方まで行ってしまっています。それを連れ戻して「マアマア気ィ短うせんとお戻りやす」と機嫌をとってますと、そのすきに他の仲間が脱走をはかるのです。
ちょうど園児を引率して遠足に出かけた幼稚園の先生みたいなものです。
 度の仲間も好きで好きでたまらないネタばかりでございます。私の愛する仲間たちのノロケ話でございます。ネタのはなし、楽屋裏ばなし、むかしばなしにムダばなし。いずれも噺にひっかけましての六十+一席。おしまいまでごゆっくりとおつきあいお願いいたします。

 昭和五十九年六月   桂枝雀

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