2009/06/08
いにしえからのラブレター
☛昔の人々も、いま生きている私たちも、まったく変わらない。
時代や場所が違っても みんないっしょ。
それを知ってすこしやさしい気持ちになれました。(けどすぐ忘れちゃうよι)
2003年7月初版
❀
君を待っていたら
木々の夜露に濡れてしまった
さびしさが心にしみて
木陰にずっと立ち尽くしていた
(あしひきの 山のしづくに 妹立つと 我立ち濡れぬ 山のしづくに) 大津皇子
わたしを待っている間に
あなたを濡らしたっていう夜露
その夜露に
わたし なれればよかったのにな
(我を待つと 君が濡れけむ あしひきの 山のしづくに ならましものを) 石川郎女
❀
目が覚めたら
髪の毛ボサボサなの
でもいいんだ今日はこのままで
昨夜大好きなあなたに
優しく抱かれて撫でられた髪だから
(朝寝髪 我は梳らじ 愛しき 君が手枕 触れてしものを) 読人知らず
❀
あなたがもし宝石なら
ブレスレットにしていつも巻きつけちゃうのに
いつもいつもあなたにくっついていたい
でもそうもいかないんだよね
(玉ならば 手にも巻かむを うつせみの 世の人なれば 手に巻きかたし) 大伴坂上大嬢
❀
たとえて言うなら
君はちょうどなでしこの花かな
何度眺めても 長く眺めても
いつ眺めても どう眺めても
飽きないだろうな
だって君はいつだって
きれいなんだもん
(愛しみ 我が思ふ君は なでしこが 花になそへて 見れど飽かぬかも) 大伴家持
❀
ちょうどさぁ
逢いたいなぁと思ってたんだ
いまごろどうしてるかなぁ……って
そしたらさ
かわいい帽子をかぶって
向こうの方から
君が歩いてくるじゃない
こんな偶然 うれしい…
(見まく欲し 思ひしなへに かづらかげ かぐはし君を 相見つるかも) 読人知らず
❀
来てはいけない場所なのに
あなたはそこを行ったり来たりしてるのね
そんなところから手なんか振ると
野守に見つかってしまうのに
(あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る) 額田王
紫草のように美しい君
憎らしいと思えるのなら
すでに人妻である君に
手なんか振ったりしない
恋したりしない
(紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我恋ひめやも) 大海人皇子
❀
もう君のことなんか忘れようって決めたのに
移ろいやすいな
ぼくの心は…
庭に咲く梅の花のように
だんだん思いは紅くなる
今でも君を愛してる
(思わじと 言ひてしものを はねず色の 移ろいやすき 我が心かも) 大伴駿河麻呂
❀
離れていて逢えないのはつらいよ
でもね
いつだって君の笑顔を思いだしてる
すぐ傍らにいるみたいにさ
だから
さみしいけれど がんばれる
(遠くあれば 姿は見えず 常のごと 妹が笑まひは 面影にして) 問答の歌
❀
なんだかバタバタと
あわただしく出かけてきたから
こうやってすこし落ち着いてみたら
君とゆっくり言葉を交わしてこなかったことに気が付いた
こころ残り
(あり衣の さゑさゑしづみ 家の妹に 物言はず来にて 思ひ苦しも) 相聞
❀
離れているから
ぼくは雲になりたいと思う
雲になれれば今君にフワッと逢いにも行けるし
明日フワッと帰ってくることだってできるのに
(み空行く 雲にもがもな 今日行きて 妹に言問ひ 明日帰り来む) 相聞
❀
逢いに行くよ
これから直ぐに
ぼくに逢うと
嬉しそうにニコッと微笑んでくれる君
君に逢いに行くよ 今
今 直ぐに
その笑顔に逢いに行く
ずいぶん待たせたね
(待つらむに 至らば妹が 嬉しみと 笑まむ姿を 行きてはや見む) 読人知らず
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